6年を超えても、クロスの原状回復費用を請求できるケース

法律コラム
不動産オーナー、管理会社の方必見!
6年を超えても、クロスの原状回復費用を請求できるケース

 

2023年12月11日

弁護士 兒玉 竜幸

 

 不動産賃貸借におけるトラブルの1つに退去時の清算,すなわち,原状回復の問題があります。

ネット社会の進展で,知りたい情報は誰でも簡単に入手できるようになりました。そのためか,借主がどこからか調べてきたネット情報をタテに原状回復費用を支払わないというトラブルが増えています。

ここ最近,特によく耳にするのが,「クロスは6年経過で価値が1円となり,借主は原状回復費用を負担しなくて良い」というものです。

実際,国土交通省の発表しているガイドラインには,クロスは耐用年数6年で経済的価値1円となり,賃借人の負担割合は0%という考え方が示されているため,一見すると借主の主張は正しそうに聞こえます。

 

でも,本当にそうなのでしょうか。

 

そもそも,6年経ったら必ずクロスを貼り替えなければいけないわけではないですよね。綺麗に使えば8年でも10年でも利用できるものです。

もっと分かりやすい例でいうと,7年間賃借していた人が,「6年経過したからクロスがどういう状況でも費用は取られない」と考えて,クロスに落書きしてしまったらどうでしょうか。

この場合もクロスについて一切費用請求できないのは何だかおかしいと思いますよね。

 

ガイドラインには続きがあり,経過年数を超えた設備であっても,借主がわざと,またはうっかり設備を破損させた場合は,本来機能していた状態に戻すための費用(工事費,人件費)などは借主負担となることがある,と記載されています。

つまり,耐用年数を超えていてもそれだけで借主の負担がなくなるわけではないということです。

 借主に負担をしてもらうことができるかは,その時々の具体的な事情によって違いがあります。正確な判断には,不動産に関係する法律トラブルに明るい専門家のアドバイスが不可欠です。

トラブル発生後では,対処方法は限られてしまいますが,発生前なら思わぬ損害を避けることも比較的容易です。

気になること,心配なことがあれば,すぐに弁護士へ相談することをおすすめします!