カスハラ対策は大丈夫ですか?

法律コラム
カスハラ対策は大丈夫ですか?

2023年8月7日

弁護士 寺口 飛鳥

 

 先日のニュースにおいて、厚生労働省の検討会が「仕事による強いストレスなどが原因で精神障害になった場合の労災の認定」において、顧客などによる迷惑行為、「カスタマーハラスメント」を新たに基準に加えることとする報告書をまとめた、という報道がありました。

 

 仕事の強いストレスなどが原因で精神障害となり、労災に認定された件数は昨年度710件にも上ります。

 

 「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、顧客が企業に対して処理不尽なクレームや妥協を行うことを言います。法令による定義はまだ存在せず、厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策マニュアル」においては、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と言及されています。

 

 カスハラが増加した背景は、SNSの普及により顧客側の発言力が増加し、企業側がその影響に屈するケースが発生し始めたという事情があります。また、カスハラが社会問題化していることは、ハラスメントを問題視する傾向があることも関係しています。

 

 カスハラの具体例としては、店員を怒鳴ったり、土下座を要求したりといった行為が考えられますが、これらに限られるものではありません。

 

 「お客様は神様」という表現もありますが、企業がこういったカスハラを放置すると、生産性の低下、離職・休職の増加、レピュテーションの悪化などのリスクがあります。さらにいえば、労働者への安全配慮義務違反を指摘され、治療費・休業損害・慰謝料などで数百万~数千万の損害賠償を請求される可能性もあります。

 

 そのため、どこまでがカスハラに当たるのか、カスハラに直面した場合にどのように従業員を守るのかについて対応マニュアルを作成するなど、あらかじめ具体的に検討しておく必要があるでしょう。