家賃保証会社の保証を受けると、滞納を原因として契約解除できない?

法律コラム
家賃保証会社の保証を受けると、滞納を原因として契約解除できない?

2023年5月23日

弁護士 兒玉 竜幸

 

 不動産オーナーにとってなじみのある家賃保証会社。その仕組みについて皆さんはご存じですか。

ごく簡単にいうと,借主が家賃を滞納した際,家賃保証会社が借主に代わって家賃を立替え払いし,その立替金を,家賃保証会社が借主に支払請求する,というのが家賃保証の仕組みです。

 ここで1つ,素朴な疑問が浮かびます。

 借主自身は何か月も家賃を払っていないが,家賃保証を受けて貸主(オーナー)に立替え払いがされているとき,はたして,家賃の滞納があるといえるのでしょうか。

 まさに,その点を主張して,滞納の事実がないから賃貸借契約の解除は無効だ!と争われた事件があります。それが大阪高裁平成25年11月22日判決です。結論として,無効の主張を認めるべきではないということは直感的に分かりますが,その理屈はどう考えるのでしょう。

  上記裁判で,裁判所は,「賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって,賃借人による賃料の支払ではないから,賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり,保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら,保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって,これにより,賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。」と述べて,その主張を一蹴しました。

 要するに,家賃保証会社の立替えは,保証契約の債務の履行であって,賃貸借契約の債務の履行ではない,だから,借主が滞納している事実には変わりはない,ということで,たしかにそのとおりという判断ですね。

  不動産に関するお悩み事がありましたら,ぜひ,弁護士法人琉球法律事務所へご相談くださいませ。