社員間の金銭の貸し借り

法律コラム
社員間の金銭の貸し借り

2023年3月27日

弁護士 寺口 飛鳥

 

 社員間でお金の貸し借りがあり、これがきっかけで会社の雰囲気が非常に悪くなってしまった。今後は社員間の貸し借りを禁止したいとの要望をお聞きすることがあります。

 

まず、企業は社内の秩序を維持することを目的とした諸事項を定めることが可能です(最高裁昭和52年12月13日)が、従業員に過度な制約を課すことはできないとされています。

社員間の金銭の貸し借りは本来は自由とされるべきものでありますが、これが横行すると社員間のトラブルが頻発し企業秩序が維持できない可能性は否定できないため、禁止規定を設けることは可能と思われます。

ただし、金銭の貸し借り禁止規定に違反した場合であっても懲戒処分を課すかどうかに関しては慎重になるべきです。

まずは注意指導をすることにより金銭の貸し借りが禁止であることを強く認識させ、なおも繰り返す場合は戒告などの軽い処分にとどめるべきです。

 ただ、従業員同士で金銭の貸し借りをするような従業員は、消費者金融などからも借り入れをしていることも多く、支払いが止まっていることも多いと思われます。支払いが止まると消費者金融は訴訟を起こし、判決を取得したうえで、従業員の給与債権を差し押さえることがあります。こうなると給与支給日に事務処理が煩雑となりますので可能な限り避けたいところです。そのため従業員間の貸し借りといったことが判明した場合はまず当該従業員のほか他の従業員からも、借金の有無などについて情報収集することが重要かと思います。