あなたの会社は残業代(時間外手当)を正確に計算し支払っていると自信をもって言えるでしょうか(1)

法律コラム
あなたの会社は残業代(時間外手当)を正確に計算し支払っていると自信をもって言えるでしょうか(1)

2023年2月27日

弁護士 寺口 飛鳥

 

あなたの会社は残業代(時間外手当)を正確に計算し支払っていると自信をもって言えるでしょうか。普段残業代請求事件を担当していると、確かに残業代は支給しているものの、未払いが生じていることが多いです。今回は残業代の計算に当たって考慮する手当にはどのようなものがあるのかについて以下解説します。

 

まず、残業代の計算方法については労働基準法37条1項に記載があります。

  労基法37条1項

「使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に

労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時

又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定

める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長

して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超え

た時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算し

た割増賃金を支払わなければならない。」

 

長いですが要は「通常の労働時間または労働日の賃金」に1.25等の数字をかけ合わせて賃金を支払わなければいけないということです。

 

では、この計算の下となる「通常の労働時間または労働日の賃金」とは何か?より具体的に言えば基本給のみを基に計算するのか、それとも通勤手当、役職手当、精皆勤手当、家族手当、賞与なども全て含まれるのか?という点が問題となります。

これについては、同法37条5項に定めがあり、「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。」とされております。

 

したがって、家族手当、通勤手当は残業代の計算の際には控除するということになります。

さらに、「その他厚生労働省令」に該当する労働基準法施行規則21条は、「①別居手当②子女教育手当③住宅手当④臨時に支払われた賃金⑤一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」も除外とされております。

 

このうち、臨時に支払われた賃金とは、「臨時的,突発的事由に基づいて支払われたもの及び結婚手当等支給条件はあらかじめ確定されているが,支給事由の発生が不確定であり,かつ非常に稀に発生するもの」をいうとされており、「傷病手当」や「結婚手当」がこれに該当します。

 

上記に述べた手当以外にもその手当を支給する趣旨によっては該当すると判断されるものもあります。逆に、家族手当や住宅手当と記載していても、独身者にも家族手当を支給していたり、実家暮らしの方に住宅手当を支給していたりと、実体との乖離が大きい場合はこれに該当しないと判断されることもあります。仮に除外賃金に該当しないと判断された場合、実際に支払うべき残業代の額が上昇することになるので、未払いが発生することとなります。

残業代の未払いは、遅延損害金が年6%、従業員退職後は年14.6%と高い金額が設定されておりますので思わぬ出費を強いられる可能性があります。

 

うちの会社、自信がないなという場合や従業員からクレームが出た場合はいつでも弊所にご相談ください。労働事件に強い弁護士と社労士があなたの会社の賃金体系を見直し問題がないか診断をさせていただきます。