取り壊し予定の建物の賃貸借にはこの特約を

法律コラム

取り壊し予定の建物の賃貸借にはこの特約を

20223月30日

弁護士法人琉球法律事務所

弁護士 兒玉 竜幸

 

 土地や建物の貸し借りで最もトラブルとなるのは、なんといっても立ち退きの場面です。

 借地借家法があるため、「正当事由」がなければ、貸した側は解約を申し入れることができません。

 この正当事由は、主に、貸主と借主それぞれの自己使用の必要性を比較して判断されることになります。

 ところで、これらの貸し借りが定期借地、定期借家であった場合は、契約期間の満了で更新なく契約を終了することができます。

 では、定期借地で土地を借りた人が、借地上に建物を建て、その建物を第三者へ普通に賃貸していた場合、借地の契約期間が終了すると、当然に建物の賃借人に解約を申し入れることができるでしょうか。

 これはつまり、普通の建物賃貸借契約の解約申入れをするときに、定期借地契約の終了が「正当事由」になるかという問題です。

 この点については、東京地裁平成8123日判決が判示していて、結論は「借地の明渡しの必要性は当然には建物賃貸人の自己使用の必要性を充足するとは言えない」。

 すなわち、定期借地が終了し、建物を収去して土地を明け渡す必要があっても、それだけでは、建物賃貸借契約の解約を申し入れるための正当事由にはならないということです。これは何だか酷なようにも思えます。

 ただ、借地借家法は、取り壊し予定の建物の賃貸借という制度を設けていて、建物賃貸借契約の際に、「建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる」としており、この特約を付けていれば問題は生じなかったといえます(借地借家法第391項)。

このように、借地、借家に関するトラブルの予防、紛争解決には専門的知識が不可欠です。借地、借家についてお悩みの方は、弊所までご相談ください。