コロナ下の債権回収

法律コラム

コロナ下の債権回収

 

 

弁護士法人琉球法律事務所

弁護士 絹川 恭久

 

 (ヤンバルクイナ@国頭村クイナの森

 

20202月に日本で新型コロナウィルスが流行り始めてから約1年が経過しました。最近の相談でも、コロナの影響が随所に見られるようになりました。 

例えば、コロナ拡大前に受注した建築現場で電気設備の導入施工をしたが、建物が完成したにもかかわらず代金を払ってもらえない、などというものです。

コロナのせいで発注者(ホテルなど)は期待した売り上げが立たず、銀行へのローン返済もリスケするなど現実に支払い余力がなく、いくら督促しても「無い袖は振れない」状態です。

こういった場合の対応はいくつかありますが、裁判を起こすのも一つの手段です。

しかし、現実に支払い余力がないなら、たとえ勝訴判決をとってもお金が支払われません。

それでは裁判する意味は全くないのかというと、「ある程度」裁判をする意味はあります。

一つは、債権の時効期間は通常支払期から5年であるところ、確定判決を取ることで時効期間が10年まで延ばせることです。

もう一つは、判決を取ると、不動産などの相手の財産に対して強制執行をかけられることです。しかし不動産には銀行ローンなどの優先的な担保(抵当権)がついている場合が多く、不動産の価格が安ければ強制執行をしても功を奏しません。 

このように一定の効果はありますが、やはり裁判で判決をとっても後の祭りで限定的な救済しか得られません。より売掛金の未回収を減らすには、裁判のような事後的な努力よりも、予防がとてもとても重要です。

例えば、代金支払い条件について前払い金を増やす、支払い不安がある相手との取引は避ける、受注工事を開始する前に金額交渉をきっちりする、一度でも支払いが遅れた相手の工事はストップするなど毅然とした対処をする。 

コロナ下ではこれまでの常識が通用しないことが多いです。事後的に裁判を頼るより、事前にできる対策をどれだけ尽くすかが大事です。企業の存続はキャッシュフローの充実にかかっています。未払いを減らし、売掛金をしっかり回収してキャッシュフローを安定させるため、常に工夫をすることをお勧めします。我々弁護士もそれを全力でサポートします。