法律コラム

インターネット上の誹謗中傷問題

2021年2月3日

弁護士 久保 以明

 今や聴き慣れた法的問題ですが、最近は顧問先などからのご相談も多くなりました。

 現行法では、誹謗中傷の被害に遭った場合、相手を突き止めるために3段階もの裁判手続きを踏まなければならず、そうこうしているうちに、通信ログの保存期間が経過していることなどから、被害者の救済が十分でないという問題があリました。

 結果、ネット上の情報などそもそも出鱈目なものも多いのだから相手にしないという態度が一番賢明というようなやるせない回答をせざるを得ないことに心を痛めていました。

 そのような中、2021年に通常国会に提出されるとされるプロバイダ責任制限法は、このような煩雑な裁判手続きを簡略化して被害者救済に寄与するものとして期待されています。

 具体的には、1回の非公開の裁判手続きにより、被害者が、①コンテンツプロバイダ及びアクセスプロバイダに対する発信者情報の開示命令を行い、その上で、②コンテンツプロバイダに対する発信者情報の提供命令、③アクセスプロバイダに対して、発信者情報の消去禁止命令を出すことで、ログの早期保全を行いつつ、①の開示命令を発するというものです。

 ネット上の誹謗中傷問題は、表現の自由との衝突する微妙な問題を孕んでいるため、被害者保護に偏る危険性を認識する必要があると思いますが、被害者救済に薄いという現状認識から進められている現在の法改正状況には、同感できるところも多いように思います。