賃借人が長期不在になって家賃滞納のまま…

琉球法律事務所のQ&Aコーナー

こちらでは、弊所の弁護士がよくある疑問にお答えしていきます。

 

Q&A

【賃借人が長期不在になって家賃滞納のまま…】

賃借人が長期不在になって家賃滞納のまま…連帯保証人と一緒にアパートに入って荷物してもOK!?

よく、こういうケースに備えて、あらかじめ契約書に、長期不在の場合は契約解除とみなして荷物を運び出して処分することに同意するという条項を記載してあるのを見ます。

 最初に同意したからいじゃないかと。どうなんでしょうか、良さそうでもありますね。

 この点、従来の裁判例、法律的な考え方としては、こういう契約条項は、自力救済条項と言われ、公序良俗に反するなどとして無効だと言われてきました。法治国家である日本国においては、こういう時は裁判をして強制執行して解決すべきであって、勝手に自分で荷物を処分してはいけない。それを認めるような合意というのは法治国家を否定する等しいから、無効なのだということです。

 しかし、現実にこのような事態になると、なんともやり切れません。

 そんな中驚くべき判決がでました。事実関係を大幅に端折ってしまいますが、刑務所に入ってしまい、長期間空き家になっていた貸家について、保証会社が先ほど述べたような契約条項を根拠に、部屋の荷物などをすべて処分してしまったことについて、結論として違法性はないというものです(東京地裁判決平成29221日)。

 これがOKなら実務的には助かりますね。ただ、この事案は、単に契約条項だけで違法性を否定したわけではなく、入居者自身が、「処分されてもやむをえません」というような手紙を送っていたなどという事情が付加されています。

 なので、この判決の結論のみを鵜呑みにして、契約条項があるからOKということで、入居者の荷物を処分してしまうという実務運用は避けるべきでしょう。