法律コラム

法務部の役割

202093日(木)

法務部の役割

 

弁護士法人琉球法律事務所

弁護士 秀浦 由紀子

 

 皆様の会社におかれては,法務部など,社内の法務全般を担当される部署を設置されていますでしょうか。今回のコラムでは,この法務部における役割について考えてみたいと思います。

 

 法務部の業務・役割を考えたとき,例えば「とりあえず法務部のチェックをうけておく」という意識から,他部門による成果物が法務部に持ち込まれ,お墨付きをもらうといったことが思い浮かべられるかもしれません。

 実際の法務部の業務・役割が上記のような範囲にとどまるのであれば,法務部が重視されていない,また,法務部を設置する意義に乏しい組織のように思われます。

 企業に求められるものとして,「コンプライアンス」という言葉は定着してきました。もっとも,「コンプライアンス」の訳は,「法令遵守」から「社会の要請への適切な企業対応」へと変化してきています。このような環境下において,法務部は上記のように限定的ではありえず,期待される役割はより大きなものになってきていると思います。

 では,現代社会において,法務部が果たすべき役割とは何でしょうか。それは,顕在化しない自社の不正リスクに気づき対処することではないかと思います。いわゆる不祥事と呼ばれる事象は,しばしば,何段階かの気づき及び対処の機会を逃した末に顕在化し,大きな問題として発展します。法務部は,このように大きな問題に発展する前に,「業務上の違和感」として察知し,不正リスクに気づき対処することで,会社の存続において,重要な役割を果たしうるものと思います。

 法務部が,このような気づきを得るためには,自社が抱えうるコンプライアンス問題に,できる限り想像力を働かせることが必要になってきます。このような想像力を培うためには,法務部担当者は,法務の知識だけではなく,普段から,自社の他部署の知識・情報に加え,経営的な知識に触れる機会を持つことが重要ではないでしょうか。

また,自社での常識が,しばしば外部からみると非常識といったこともある話ですので,社内だけでなく,社外との人的ネットワークをもつことも,あわせて重要なことかと思います。

これからの社会においては,変化の速度もより加速し,企業も柔軟な対応を求められることが多くなり,社内における法務部に期待される役割は,ますます大きなものになると予測されます。

皆様の会社に,法務部が設置されているとしましたら,是非,他部署,経営陣と密に連携をとって頂き,これからの企業経営をより円滑なものにしていただければと思います。

以上