事務所ブログ(2015年11月)

上野のモネ 
                    竹下勇夫 

日弁連の人権擁護大会が幕張であったので、そのついでに上野の美術館に出かけました。東京都美術館にマルモッタン美術館のモネが出張してきているというので、どうしても見たくなって行って来ました。

マルモッタン美術館はパリにありますが、ブローニュの森の方にあって公共交通機関ではどうやって行ったらいいのかよくわからない(不勉強)ということで、パリのほとんどの美術館は見て回っているにもかかわらず、いまだに見たことのない美術館のひとつです。

 マルモッタン美術館の所蔵作品の中でも最も有名なのがモネの「印象・日の出」でしょう。いうまでもなく「印象派」という名前の由来となった作品です。昔からこの絵の複製を自宅に飾って喜んでいる私ですが、本物は見たことがありません。いよいよ上野で本物とご対面できると思い、上野公園に出かけて行きました。

 全く混雑していませんでした。ちょっと拍子抜けです。

さっそく入館料1600円を支払って。と思ったら係りの人に年齢を訊ねられました。失礼な、と思ってひょいと料金表を見ると65歳以上は割引料金になっているではありませんか。今まで自分がそれに近い年齢であるということを意識したこともありませんでしたから、相当なショックを受けましたが、気を取り直して、まだ65歳になっていませんよ、どうもありがとう、とか言いながらよろけた態勢を立て直し、1600円支払っていざ入場。

 ほかの絵はパスして真っ先に「印象・日の出」へ。さすがにここは行列をしています。陳腐な言い方ですが雷に打たれたような衝撃を受けました。複製やら図版やらで見るこの絵は何かもやもやとしている感じが拭えず、なるほどこうだから「印象派」といわれるのかなどとこれまでは妙に納得していたのですが、全然違う。光のあて方にもよるのだと思いますが、絵の輪郭は極めてはっきりとしており、太陽は絵から浮き出てくるように見える。もっとも、行列について行って絵のすぐ前まで行ってみると、またその印象は異なっていてなるほど「印象派」か、というような感じになります。モネが求めていたのはこういう絵であったのか、と改めて納得した次第です。

 このほかにも睡蓮やらジベルニーの日本の太鼓橋やらいろいろな絵があって楽しめました。でも個人的には「印象・日の出」が別格に素晴らしいと思います。年齢を重ねれば睡蓮も好きになるのかと思っていましたが、どうもそうではないようです。ジベルニーのモネの庭園には何年か前の秋に行ったことがあり、紅葉がとてもきれいでした。あの庭の美しさ、それは日本庭園といいながら「モネの日本庭園」ともいうべきものですが、あれを見てしまうと絵よりも本物の庭のほうがいいな、などとモネに失礼なことを考えてしまいます。この太鼓橋の絵がいいと思うようになるにはもう少し時間がかかりそうです。

 いずれにしても、近いうちにマルモッタン美術館に行ってみたいと思うひと時でした。