法律コラム

従業員の健康管理2(業務遂行と業務起因性)

2009年11月6日金曜日
                       琉球法律事務所 弁護士 原 田 育 美

 

前回,業務上の負傷等というためには,「業務起因性」が必要であり,その第一次的判断基準が「業務遂行性」であるというところまでお話しました。
 今回は,「業務上遂行性」と「業務起因性」について考えてみたいと思います。
まず,「業務遂行性」とは何でしょうか。行政解釈では,「業務又は業務行為を含めて『労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあること』に伴う危険が現実化したものと業務上認められること。」とされ,以下の3つの場合に,「業務遂行性」があると言われています。

1.事業主の支配下にあり,かつ,その管理(施設管理)下にあって,業務に従事している際に生じ
 た災害。

2.事業主の支配下にあり,かつ,その管理下にあるが,業務には従事していないときの災害であ
 り,たとえば,事業場内での休憩中や始業前,始業後の事業場内での行動が,これにあたります。

3.事業主の支配下にあるが,その管理を離れて,業務に従事している際の災害で,たとえば,事業
 場外での労働に従事しているときや,出張中の災害がこれにあたります。

 それでは,このような意味での「業務遂行性」が認められれば,「業務起因性」まで認められるのでしょうか。上の類型に即して,具体的に考えてみましょう。


 まず,1の業務遂行性が認められる場合は,通常,業務と負傷等との関連が明らかであることから原則として,この意味での業務遂行性が認められれば「業務起因性」が認められます。ただし,それが自然現象や外部の力,本人の私的逸脱行為,規律違反行為等による場合は,「業務起因性」は認められません。

もっとも,自然現象や外部の力も,当該職場に定型的に伴う危険であれば,「業務起因性」があるといえるでしょう。

 次に,2の業務起因性が認められる休憩中の災害等の場合は,「業務起因性」の有無は個別に判断する必要があり,労働時間中であれば業務起因性があるものや,事業場施設の不備や欠陥によるものでなければ認められないもの等があります。

 また,3の業務遂行性が認められる事業場外労働や出張中の災害については,従業員が危険にさらされる範囲が広いため,業務起因性は広く認められます。

 堅い話が続きました。次回は,判例に現れた具体的な事例に則してもう少し掘り下げてみましょう。

以 上