法律コラム

改正労働契約法について1

2013年6月3日月曜日
                        琉球法律事務所 弁護士 秀浦 由紀子


 今回初めて法律コラムを担当致します,弁護士の秀浦です。
本コラムから数回にわたって,改正労働契約法についてご説明させて頂きます。まず,今回のコラムでは,改正の概要,無期転換ルールの内容についてご紹介します。

1 労働契約法改正後の3つのルール
「労働契約法の一部を改正する法律」が平成24年8月10日に公布されました。今回の改正では,以下の3つのルールが規定されることになりました。
(1) 有期労働契約の無期労働契約への転換(第18条)
(2) 「雇止め法理の法定化」(第19条)
(3) 不合理な労働条件の禁止(第20条)
 なお,施行日は,(1)(3)が平成25年4月1日,(2)が平成24年8月10日です。

2 有期労働契約の無期労働契約への転換(第18条)について
(1)有期労働契約とは
    まず,有期労働契約とは,1年契約,6か月契約など期間の定めのある労働契約のことを指します。パート,アルバイト,契約社員,嘱託等,職場での呼称にかかわらず,有期労働契約であれば,新ルールが適用されることとなります。
(2)無期転換という新ルールの内容
  同一の使用者との間で,有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合,労働者の申込みにより,無期労働契約に転換します。
 例えば,現在の有期労働契約期間中に,通算契約期間が5年を超える場合,労働者はその契約期間の初日から末日までの間に,無期転換の申込みをすることができることになります。
 労働者が無期転換の申込みをすると,使用者が申込みを承諾したものとみなされ,無期労働契約が成立します。このとき,無期に転換されるのは申込み時の有期労働契約が終了する翌日からです。
   なお,5年のカウントは,このルールの施行日である平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象となります。施行日前に既に開始している有期労働契約は5年のカウントに含めません。
(3)空白期間(クーリング期間)について
   有期労働契約と次の有期労働契約との間に,空白期間(同一の使用者の下で働いていない期間)が6か月以上あるときは,その空白期間より前の有期労働契約は5年のカウントに含めません。これをクーリングといいます。
なお,通算対象の契約期間が1年未満の場合には,その2分の1以上の空白期間があれば,それ以前の有期労働契約は5年のカウントに含めません。
(4)無期労働契約転換後の労働条件
    このルールにより,労働契約が無期に転換した後の労働条件(職務,勤務地,賃金,労働時間など)は,別段の定めがない限り,直前の有期労働契約と同一になります。但し,別段の定めをすることで,労働条件を変更することは可能です。
 なお,別段の定めとは,個々の労働契約,就業規則,労働協約等です。

3 無期契約転換後の労働条件の整備について
 このルールによって無期契約転換した後の労働条件について,当初から無期契約の条件で採用された正社員と同一の労働条件になってしまうのではないか,と誤解されることがよくあります。
 しかし,これは誤りです。前述の通り,無期に転換した後の労働条件は,別段の定めがない限り,直前の有期労働契約と同一になり,無期契約の条件で採用された社員と同一条件になる,ということはありません。
 ここで,ポイントとなるのは,使用者と労働者との間で,別段の定めをすれば,無期転換後の労働条件は,当該定めに従うということです。
 有期労働契約は,賃金等の面で比較的好条件であることも少なくありません。新ルールの下で何も取り決めをしなければ,労働条件はこうした好条件のまま,契約期間が無期になる,といった事態が生じてしまいます。
 したがいまして,会社としては,今回の改正への対策として,無期転換社員が発生する平成30年4月1日までに,まず無期転換社員の労働条件を整備しておくことが急務といえます。

次回のコラムでは,「雇止め法理の法定化」についてご紹介します。
 

以 上