法律コラム
有給休暇
2023年3月9日
弁護士 寺口 飛鳥
従業員から年次有休休暇をとりたいと言われたとき、これを無下に却下したり、時期を何度も変更したりすると違法とされます。
年次有給休暇は、従業員が具体的な日時を指定しさえすれば当然に休暇が成立する、というのが大原則です。よく勘違いされている方を見かけますが、有給休暇を取得することに会社の承認は一切不要なのです。
したがって、会社は従業員から年次有給休暇の取得を申請された場合、指定された日に出勤を命じることはできません。
しかし、このような有給休暇についても限度があり、労基法39条5項は、社員から指定された時期に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、事業運営上差し支えない日に年次有給休暇の取得時期を変更させることができる、という「時季変更権」を会社に認めています。
では、この「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当する場合というのはどのような場合かというと、大阪高判昭和53年1月31日判決は「当該労働者の所属する事業場を基準として事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の頻閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべき」であるとしています。
要するにケースバイケースですので一概に違法か適法かを判断することは難しいでしょう。
ただ、最高裁判決において、新聞記者が24日連続した年次有給休暇を申請し、会社が後半12日間について時季変更権を行使したケースで、諸般の事情を考慮したうえでこれを適法と判断しました。
この裁判例からすると、長期間に渡る年次有給休暇の取得申請に対しては、時季変更権が認められる可能性が相当程度あるといえます。しかし、これもケースバイケースですので同じ期間の指定でも違法となることは十分ありうるため注意が必要です。