法律コラム
労働時間

2023年3月6日

弁護士 寺口 飛鳥

 

会社は従業員に対しての労働時間に応じて賃金を支払う義務がありますが、この労働時間に含まれるか否かが争われることが多いです。よくある問題として、着替えや準備、片付けが労働時間に含まれるか、というものがあります。

 

まず、労働時間とは何か、という話ですが、最高裁平成12年3月9日判決によると「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であると言われています。

そして、「業務の準備行為等を事業場内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、」「当該行為は特段の事情のない限り使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ」労働時間に該当するとされています。

そのため、会社において制服が定められており、着替えの場所も指定されているような場合は、基本的に着替え時間も労働時間に含まれ、賃金が発生するものと考えておいたほうがいいでしょう。

また、片付けなどに関しても、これが社内で義務とされていているような場合は労働時間に該当し、反対に会社が何ら命令することなく自由な意思にゆだねられているような場合は、該当しないと考えてよいと思います。

ただし、会社が指示・命令していないとしても、就業規則において、これらの作業をしないことによって不利益が課されるような仕組みとなっていたり、事実上不利益な状態に置かれる可能性があると認めらる場合は、黙示的な指示があったとして労働時間に該当すると判断される可能性がありますので注意です。