法律コラム
2022年4月26日
弁護士法人琉球法律事務所
弁護士 山 下 剛
日本は沖縄県も含め、65歳以上の人口の割合が全人口の21%を超える「超高齢化社会」を迎えました。
そして、このような高齢化の進展とともに、認知症を患う方も増加しています。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人と推計されており、約6人に1人が認知症を患う計算となります。
これまで遺産相続の対策に関しては、自分が亡くなった後に、家族へのどのように財産を引き継いでいくかという点について主に対策が採られてきました。
しかし、こうしてみると認知症はだれも発症しうるものであり、自身が認知症を患ってしまった場合にどのように資産を管理・運用するのか、生前中の認知症対策も併せて検討しなければなりません。
そこでお勧めしたいのが、「家族信託」という仕組みです。「家族信託」という呼称には、「信頼できる家族に財産の管理処分を託す」といった意味が込められています。
この仕組みを活用すれば、例えば、自分が認知症を患ってしまった場合でも、生前中から収益不動産の管理を家族に任せ、自分が亡くなった場合には、この不動産をその家族に引き継ぐといった対策が可能になります。
県内の金融機関では、この家族信託を活用して、所有する土地を家族に信託した上で、金融機関から借入をし、その借入金で新たにアパートを建築するとの事例も報告されています。この土地とアパートも、将来的には信託を受けた家族に承継される予定です。
このような家族信託の活用や遺産相続の生前対策をする上で大切なことは、認知症を患う前から、家族と協議し、遺言書や信託の契約書を作成するなど事前に準備をしておくことです。是非とも元気なうちに認知症対策のご相談にいらして下さい。
以上