法律コラム

コロナ下で起こりえる貿易トラブル予防策

 

 

弁護士法人琉球法律事務所

 弁護士 絹川恭久

 

 

 コロナの影響でインバウンド観光客が激減しました。他方で海外に行けない日本人観光客が沖縄や北海道を目指す動きもあります。とはいえ、緊急事態宣言を出したりGo to Travelキャンペーンをやったりと、国の政策はストップ・アンド・ゴーを繰り返しており、民間業者は無用に振り回されている感が否めません。

 

 さて、そのような中でも将来の観光客の回復やポストコロナの新しいニーズに向けた企業の準備は欠かせません。ITや電子機器関係の投資も今後は必要になりますが、現在では多くのIT関連機器や装置は国外(特に中国)で生産されております。そういった際、海外(中国)企業から製品を購入する契約、いわば「輸入貿易取引」をすることになります。

 

海外企業から機器や装置を購入する「輸入貿易取引」では、国内企業から購入する場合と比べて注意すべき点が多数あります。その中でも問題となりやすい事柄に「検査(検品)」の問題があります。

高額・精密な機器は、納品前にしっかり作動するかの出荷前検査(検品)が欠かせません。コロナ前であれば品質検査の人員を直接中国の工場に派遣して、出荷前検査時に問題があればその場で修繕させることができました。

ですが、今は国境を越えた「ヒトの移動」が極度に制限されており、そのような人員派遣は容易ではありません。その結果、購入する日本企業側が、やむを得ず工場での出荷前検品をせずにとりあえず日本に輸送させて、受領時にのみ検査(受領時検査(検品))のみを行う対応で妥協してしまうことがあります。こういった時に不具合や動作不良、品質不良が発見される場合があります。

受領してから発見された不具合の修繕は容易ではありません。もう一度出荷元に戻して修繕させて送りなおすにも余計なコストがかかりすぎます。こういった問題がありますので、出荷前検査をおろそかにすることはあまりお勧めできません。

対応策としては、ZoomWeb技術を使って遠隔で出荷前検査をする方法もあります。また、海外現地で代行検査をしてくれる業者を雇い入れて出荷前検査を行う方法もあります。これらの手段を駆使しながら、なるべく出荷前に不具合を発見・対応してしまうことが肝要です。

 

コロナ下における「輸入貿易取引」の一つの注意点として、出荷前検査をおろそかにしないよう、各種手段を使って工夫をすることをお勧めします。