【アルバイトへの交通費支給は必須か?】

琉球法律事務所のQ&Aコーナー

こちらでは、弊所の弁護士がよくある疑問にお答えしていきます。

 

Q&A

【アルバイトへの通勤手当支給は必須か?】

先日最高裁で、立て続けに同一労働同一賃金の関する5つの判決が出されました。それは賞与や退職金といったものがテーマでしたが、では、アルバイトと正社員とで交通費支給について差異を設けるのは許されるのでしょうか。

これについては、厚生労働省のガイドラインによれば、正社員も非正規社員も同一の通勤手当を支払わなければならないと記載されていましたが、横浜地裁で半年前ほどに判決がでました(アートコーポレーション事件。横浜地裁判決令和2625日)。判決は結論的にはガイドラインと同様の結論をとり、アルバイト社員とその他の社員との通勤手当の差異は労働契約法20条に違反するとされました。 

 同一労働同一賃金は、正社員と非正規社員との不合理な差異を禁止するもので、合理的なものであれば差異があってもよいということになります。交通費については、正社員だろうが非正規社員だろうが同じように通勤に費用がかかるのにそこに差異を設けることは不合理であろうということでしょう。

しかし、よくよく法律の原則に立ち返って考えてみると、交通費というのは、労働者側が弁債に要する費用で、特段の合意がない限りは、債務者(労働者)が負担するべきものということになります(民法458条)。であれば、通勤手当というのは、会社側が労働者のためにあくまで便宜を図って支払うものなのだから、その対象労働者をどう定めるかは本来的に自由ではないかとも考えられます。そうであれば、正社員と非正規社員で差別をしても公序良俗に反しない限り有効と考えることもできますね。

実務対応としては、ガイドラインとこの横浜地裁判決が出たので、両者に差異を設けない運用が無難といえそうですが、深堀して考えてみると、必ずしもその結論が正しいというわけではないのかもしれません。