共同研究開発契約,秘密保持契約を作成する場合の注意点

法律コラム

共同研究開発契約,秘密保持契約を作成する場合の注意点

2020827日(木)

共同研究開発契約,秘密保持契約を作成する場合の注意点

 

弁護士法人琉球法律事務所

弁護士 絹川恭久

 

近年、急速な技術革新や顧客ニーズの変化・多様化を踏まえ、従来と違った新商品や新技術開発の必要性が高まっています。単一企業の従来型ノウハウでは限界があるため、企業の枠組みを超えて複数企業で新技術を共同研究したり、違った特徴を持つ企業同士がコラボレーションして、より消費者に遡及する新商品を開発する場面も増えております。

異なる企業間の取り組みですので、これら共同研究開発にはメリットもあればデメリットもあります。整理すると以下の通りです。

共同研究開発のメリット・デメリット:

メリット

・自社にない技術を導入又は自社技術と融合することによるシナジー効果

・開発にかかるコスト・リスクの分散・低減

デメリット

・開発成果及びその収益を他社と分配せねばならない

・自社技術、秘密情報の流出リスクが生じる

他社と共同研究開発をしようとする場合、こういったメリット・デメリットを意識しつつ、相手方と適切な共同研究開発契約や秘密保持契約を締結することが必要となります。

 

 紙幅の関係もあるので、ここでは共同研究開発契約を作成する際に抑えるべきポイントを簡潔に整理します(共同研究開発契約には秘密保持としての機能も含むものとします。)

共同研究開発契約の重要ポイント:

     各開発当事者の役割、各当事者が提供すべき技術・ノウハウ・守秘情報の範囲の明確化

     共同開発にかかるコストの分担、共同研究開発の成果・収益の帰属・分配方法の明確化

    ③     共同開発契約や守秘義務に違反した場合の救済方法、ペナルティ

まず①については、開発目標と期限を明確にし、目標との関係でそれぞれが果たす役割を規定します。開発に向けた前向きの議論なので、この点の交渉は比較的容易に進みます。

②については、開発にかかるコストの押し付け合い、開発の結果の成果・利益の奪い合いというゼロサムゲームになるので、交渉上の優位を持っている当事者の意向が反映されがちです。開発の結果思わぬ成果が出た場合、激しい争いになりますので、あいまいにしておかず契約締結段階で可能な限り明確化することをお勧めします。

実は③の違反に対する救済方法やペナルティの規定が一番重要です。共同研究開発には思った成果を上げずに終了するものも多数あります。結果として成果を上げなかったにもかかわらず、自社の持つノウハウや技術などの強みが相手方に伝わり、不正に利用されてしまうリスクが生じます。これを可能な限り防ぐためには(1)開発で提供した技術・ノウハウ情報の漏洩(情報漏洩)を禁止する(2)当該情報を開発以外の目的に利用(目的外利用)することを禁止する規定をするだけでは足りません。情報漏洩や目的外利用がある場合に、即座に対抗手段を起こしてそれらを辞めさせ、自社の損害を回収する手段を契約に規定することが不可欠です。

具体的な規定の仕方としては「相手方が情報漏洩や目的外利用をした場合は、裁判所に差止を求めることができる」という差止請求権を明記します。また、「違反があった場合、違反側は一回の違反について〇〇円の損害賠償金を支払わねばならない」という、いわゆる損害賠償の予定規定を入れることです。前者は即時に違反状態を停止させるために必要です。後者は、通常は裁判上立証困難な「違反による損害賠償額」の立証を不要にすることで、相手方に損害賠償請求をしやすくします(結果として損害回収が早期にできます)。

 

 他にもいろいろな点がありますが、共同研究開発契約を作成する場合、まずは上記3つの点に注意して作成・交渉することをお勧めします。弊事務所の顧客企業にもこういった共同開発を行う企業も多く、これらの契約作成・レビューを多く扱った経験があります。共同研究開発契約・守秘義務契約の作成・交渉についてお困りの際は、弊事務所までお気軽にお問い合わせください。